7月おてばん その2 高貴なる

貴族のつとめ


そして、扉を開けるとそこは、「おてばん」でした。
ちゃんと、「おてばん」と書いておいて、ほしいものです……。


それでは、遊んだゲームの紹介です。
まずは、「貴族のつとめ」


1990年の「ドイツゲーム大賞」を受賞した有名なゲームです。
このゲームも、持っているけど遊んだことない名作の1つでして、1回遊んでみたいと思っていました。


このゲームですが、昔、知り合いに


「どんなゲーム?」


と聞くと、


「ジャンケン・スゴロク」


という答えが返ってきました。


今回、遊んでみましたが、まさにその通り。
ルールとしては、単純すぎるぐらい単純なゲームです。
でも、そのヘンテコなテーマと合体して、なかなかに楽しいゲームでした。


難点はというと、「ハゲタカのえじき」と同じように、バッティンクを楽しむゲームなので、プレーするときは、最大プレー人数の5人が最適であることだそうです。
ちなみに、最適な人数ではないということですが、2〜5人まで遊べます。
ということで、今回は、最適の5人で遊びました。


プレーヤーは、貴族です。
自分の分身である三角柱のコマをスタート地点である「クラブルーム」に置きます。
ゲームボードには、このスタート地点の「クラブルーム」とゴール地点である「ディナーテーブル」、そして、移動していくマスにあたる「お城」が描いてあります。
自分のコマをお城まマスにそってどんどん進めていって、1番最初にディナーテーブルについた人が勝ちます。
これが、ゲームのメインであるスゴロクの部分です。


で、どうやって、コマをすすめるのか?
これはなんと、自分のコレクションを自慢して、自慢ができればそれだけ進むことができるというシステムです。


ゲームの題名になってます、「貴族のつとめ」ですが、「つとめ」は、漢字で「務め」と訳されているものもあります。
つまり、貴族の義務ということですね。
高貴なる人間には、高貴なる義務がつきまとうわけですよ。


ここでいう貴族というのは、多分、お金と時間がありあまっている人のことです。
まあ、そんな人たちの義務ですから、わたしたちから見れば、意味のない道楽に見えてしまうようなことです。
それは、何か?


それが、「コレクション自慢」なのです。


まあこれが、世界的な名画なんかなら、わからんではないのですが、どうも、そんなものよりも、彼らは仲間えちで、


「おぉー」


と言われる方が、重要なようです。
だから、彼らの集めて自慢するコレクションは、「ノーマ・ジーンのリップスティック」だったり、「ヒッチコックの座った椅子」とか、「ミッキーマウスのおもちゃ」とか、果ては、「おまる」とか、「プラカード」とか、わたしたちから見れば、


「何でそんなものに、大金を……」


といいたくなるものばかりです。


あ、「シュタイフ・テディ」は、ちょっと欲しいかも。
……。同類?
まあ、人間には、だれでもこういう傾向はあるということで……。


まあ、これが、大まかなこのゲームのストーリーです。


プレーヤーは、最初4つずつコレクションを持っています。コレクションは、カードになっていて、ランダムに4枚配られます。
このうち、3つ以上のコレクションを展示することで、他のプレーヤーに、自慢ができるわけです。


自慢をすると、1番先頭のコマの止まっているマスに書いている数字だけ進むことができます。


しかーし、他のプレーヤーだって、自慢がしたくて、自慢したくてたまりません。
そうすると、複数のプレーヤーが、同じときに、コレクションの展示会を開催することになります。
そうなってくると、重要になるのは、


「だれのコレクションが、充実しているか?」


ということです。
この場合は、マスには、2つの数字が書いてあります。
だから、1番充実したコレクションを出した人と、2番目に充実したコレクションを出した人だけが、その数だけ動くことができます。
3番目以下の人は、進めません。


それから、あんまりモラルがないので(笑)、人のコレクションを盗もうとする不届きな輩もでてきます。
人目につく展示会は、泥棒の格好の活躍場所です。


プレーヤーは、作品を展示する代わりに、泥棒カードを出すことができます。
泥棒カーどを出したプレーヤーは、展示会終了後、好きなプレーヤーのコレクションを1枚自分のものにすることができます。


「うむ。これで、わたしのコレクションも、充実してきたな」
↑ 非道い。


でも、世の中、そんなに甘くありません。
泥棒が出そうだと思えば、探偵をやとうことができます。
ただし、探偵を雇うと、そのときは、展示会ができません。


「じゃあ、自分のコレクションは、守れないやん。なんかいいことあるの?」


いえ、この探偵、実は、誰のコレクションも守ってくれません
探偵のカードを出そうが出すまいが、泥棒がいて、コレクションが出されていれば、必ず泥棒はコレクションを盗みます。
そして、コレクションを盗み終わってから、探偵は泥棒を捕まえるわけです。


「それ、なんの意味が……」


1つは、泥棒カードは1人2枚しかありませんので、上手に捕まえれば、泥棒が刑務所に入っている間*1は、そのプレーヤーの泥棒の動きを封じることができます。


それから、泥棒を捕まえたプレーヤーは、順位に応じて、自分のコマを進めることができます。


ただし、泥棒が1人もいなければ、その回は、空振りに終わってしまいます。


つまり、コマをゴールに向かって進めるには、「展示会」をするか、「探偵」を雇うかしなければならないわけです。


効率よく、進みたいですから、「展示会」をしたいわけですが、他のプレーヤーが、泥棒ばかりだったら、根こそぎコレクションを奪われたりします。


「探偵」は、「泥棒」がいない場合は、必ず空振りしてしまうというリスクが伴います。


「泥棒」は、「展示会」さえ開催されれば、必ずなにかのコレクションを盗むことができます。
でも、「探偵」に捕まると、自分の次の回の手が狭まってしまうというリスクがあります。
また、「泥棒」を警戒して、だれも「展示会」を開催しないということも、考えられます。


つまり、


相手が「展示会」を出せば、こっちは「泥棒」を出したいし、
相手が「泥棒」を出せば、こっちは「探偵」を出したいし、
相手が「探偵」を出せば、こっちは「展示会」を出したい。


という関係が成り立ちます。
このあたりが、ジャンケンです。


さてこのゲーム、泥棒以外に、もう1つ、コレクションを充実させる方法があります。
それが、オークションです。


プレーヤーは、その回の1番最初に、その回に自分が行く場所を決めなければなりません。
会場は、2つあって、「オークションハウス」と「お城」です。


「お城」では、今まで書いてきたような、「展示会」とそれにまつわるやりとりが行われます。
「オークションハウス」では、コレクションを充実させるためのオークションが、行われます。


つまり、プレーヤーは、その回ごとに、「お城」に行く者と「オークションハウス」に行く者にわかれるわけです。


このあたりが、多分、5人いないとおもしろくないと言われるところなのだと思います。
どういうことか?つまり、いかに人のいない会場を選ぶかというのが、大切になってくるのです。


たとえば、その回、「お城」に行くプレーヤーが1人だけだった場合。
そのプレーヤーは、泥棒の心配や、自分より充実したコレクションを展示される心配なしに、心おきなく「展示会」ができるわけです。


「オークションハウス」では、どうか?


「オークションハウス」で出来ることは、絵を買うために「小切手」を支払うか、「泥棒」を雇うかの2つです。ここでは、お城のように「探偵」を雇って、「泥棒」を牽制することは出来ません。


複数のプレーヤーが、「小切手」を出した場合、たくさんの小切手を出した方が、その小切手を払って、コレクションを手に入れることが出来ます。


「泥棒」カードを出したプレーヤーは、ここではコレクションではなくて、支払われた小切手を盗むことが出来ます。
ただし、小切手は、1人の泥棒しか盗むことが出来ません。もし、複数のプレーヤーが、「泥棒」を雇っていた場合は、2人のプレーヤーは、お見合いしてしまって、なにも盗むことが出来なくなってしまいます。


もし、「オークションハウス」を選んだプレーヤーが、1人だった場合は、他のプレーヤーと競り合う必要がないので、安くコレクションを手に入れられる可能性が出てきます。


プレーヤーの人数が少なくなると、こういう、1人だけその場所にいるというおいしい状況が多くなってしまって、考える部分が少なくなって単調になってしまうのだと思います。


こうやって、人の裏を上手に読んで選びながら、ゴールまで進めていくというゲームです。


プレイの感覚は、ちょっと地味な感じがします。
でも、なんとも、浮き世ばなれしたテーマが、このゲームの雰囲気にあっているなぁと思います。


たしかに、選択肢はジャンケンなんですが、そこに、「どうしたら得か?」という要素などが入って、読みの要素も入ってくるので、なかなか、単純な偶然ゲームではないですよ。


うむ。味わい深い1品でした。

*1:刑期が終わると(というか、刑務所がいっぱいになると)、収容された順番に泥棒は刑務所から出て、もとの持ち主のところに帰って行きます