見事なほどの…


恋愛ものです。
そして、見事なほど全部、異類婚のお話です。5話全部。


このあたりの感性が、わたしを惹きつけるんだろうなぁと思います。
まあ、もっといろいろな恋人達の作品はあるんだから、わたしと感性があったのは、安房直子さんではなくて、編者の人かも(笑)


それでは、1話ずつの感想です。


天の鹿


鹿と少女のお話です。


少女の父親は、猟師で鹿撃ちの名人です。


でも、鹿がこの家の人にもっているのは、不思議と恨みとかそういうのではないんです。ただ、おぼえていてほしい。そんなことを思っているという。


なんだろう。怖さも、とこかにちょっとあるのですが、それ以上に、自然の持つ懐の深さみたいなものを感じさせられます。


熊の火


若者と熊の娘さんの話。
動物の方が女の子の話もありますが、熊というのはけっこう珍しいかも。


これは、もう戻れないという感じの強いお話で、ちょっと「きつねの窓」を思い出しました。


孤独の陰に、ファンタジーがあります。


あるジャム屋の話


若者と鹿の娘さん。
この鹿の娘さんが、絵が上手だという。


椅子にこしかけている牝鹿ってどんなんだ?どんどん、擬人化が進んでいるようでいて、でも、鹿の形をしているようで…。
だって、人間にならないといけないんですからねぇ。


「鹿のまんまで、よかったんだよ。」


と、この言葉にたどり着くためのお話だったんだと思います。


鳥にさらわれた娘


これはなんだか、遠野の昔話を思わせるような話です。


鳥にさらわれて、逃げ帰った娘。
でも、鳥の優しさもしっていて、自分から戻っていく。


まわりから見れば、魔物にかどわかされたように見えますが、本当の幸福は、自分自身にしか見えません。


べにばホテルのお客


かわいい話です。


以下、ネタばれありです。




最後にやっと、人間同士の恋愛がきたか……と思ったら、なんと、うさぎに負けてしまうという……。


さ、作者なのに(笑)


物語は、作者のものではなくって、やっぱりそこで生きている登場人物たちのものであると思います。